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チャーチル

チャーチル

「世界のホエールウォッチング」というタイトルながら、このページは鯨類が対象ではありません。4本足のクマです。でも、ホッキョクグマ(シロクマ)も海棲哺乳類の一種なので、ここの仲間に入れさせてもらいました。
カナダのチャーチルでは、10月から11月まで、ホッキョクグマを見られます。北に面したハドソン湾が凍ったら餌のアザラシを捕りに行こうと、凍結を待つクマたちが小さな街の近くへ集まってくるのです。
シロクマツアーでは、専用のバギー車に乗ってクマを探し、出逢い次第ウォッチします。遠くに姿が見えることもあれば、すぐ近くに寄ってくることもあります。
日本からチャーチルまでは、バンクーバーとウイニペグで乗り継ぎます。往復とも途中1泊しなくてはなりませんが、1週間の日程で充分ウォッチを楽しめるでしょう。現地には2つのツアー会社があり、シーズン中はそれぞれ一日ツアーを催行しています。私たちは、そのツアーに3日間参加しました。

2004年10月30日〜11月1日

7時30分、ホテルまでピックアップのスクールバスが迎えに来ました。零下10数度という寒さに備えて、身支度をしっかりします。
バスバスはあちこちの宿を回りながら40人ほどの乗客を乗せ、街から離れたバギー乗り場まで走ります。そこで、大きなタイヤのウォッチ専用バギー車に乗り換えます。バギー車の中は、広い通路の左右に2人掛けの椅子が並んでいます。暖房が効き、後部に簡易トイレと展望用デッキが付いています。窓は半分開くようになっていて、停まってクマをウォッチするときには自由に開閉できますが、手や顔やカメラの紐などを決して外に出さないように注意されました。
9時、ツアーの出発です。同じようなバギー車が10数台、ゆっくり動きだします。どの車にも観光客が大勢乗っています。道に沿って走りますが、雪が積もってたり凍ってたりして道から逸れることもしばしばで、氷混じりの大きな水たまりも乗り越えていきます。だいたい同じようなところを通るとはいえ、コース取りやウォッチするクマはその車によって変わります。
シロクマもうこのあたりは、いつどこでホッキョクグマに会ってもおかしくありません。じきにスピードを落としたと思うと、先行したバギーが停まって2頭のクマをウォッチしています。私たちのバギーもその後ろに停まりました。
ヤングと思われる2頭は、車のすぐ近くにゆうゆうと座り込んでいます。初めて見たホッキョクグマは、腕も足も太く、頭はやや細めで首は長く伸びています。その体毛は真っ白というより、ややクリームがかってます。その毛が日差しを受けてキラキラ光り、とてもきれいです。クマたちは、ちょっとじゃれ合ってみたり、またどてんと腰を下ろしたりしています。
やがて、クマが近すぎて動けない先のバギーを迂回して、私たちのバギーは動きます。この2頭を皮切りに、次々とクマに会います。はじめはなかなか見わけられなかったホッキョクグマの姿も、慣れると自分でも見つけられるようになります。動いてる姿は見つけやすいですし、白い雪の上に丸くなって寝てるホッキョクグマも、そのちょっとした色の違いでわかるようになりました。
バギー車バギー車は、ゆっくり走ってはクマを見つけて停まりしばらくウォッチ、クマが遠ざかるとまたエンジンをかけるということを繰り返します。
11時になるとホットチョコレートかコーヒーのサービスがあり、12時頃のランチはスープにサンドイッチがだされます。温かいスープが嬉しいです。この昼食休憩のときは、匂いに釣られるのか、よくクマが寄ってきます。スープ皿を持ったまま、クマも見たいし撮りたいし、でもお皿を置くところもないしでおろおろしてしちゃいます。そんなときに限ってクマはバギーのすぐ横まできて、なんとかお皿を手離してカメラを構えようとするけど、近過ぎて望遠はダメ、広角に換えなくちゃ、いやそれともいっそコンパクトデジカメで撮っちゃおうか、と慌ててる間に、通り過ぎていきました。
そんなふうにクマのほうから車に近づいてくることが毎日2〜3回あったでしょうか。
TOMOKOクマはまっしぐらにどんどん向かってくるのではなく、あたりの様子を見い見い、ためらいつつ寄ってきます。数歩歩いては停まり、どうしようか戻ろうか、それとも思いきってもっと進もうか、迷いながら、少しづつ近付いてきます。バギーに触れそうなところまできても、まだためらってます。そんなときうっかり変な音でもたてようものなら慌てて逃げていってしまうので、観光客たちは、近づきそうなクマがいると、声を潜め息をつめてじっと待ってます。やっとすぐ真下までやってきて、デッキに並んでる私たちを見上げる顔は、ちょっと困った犬みたいな表情をしてました。決してあけっぴろげに興味津々だったり、また媚びたりしてはいませんでした。
たまたま私がデッキの端にいたとき、タイヤに手をつき伸び上がってこちらを見てるクマと眼が合いました。しばし、どちらも固まったまま、じーっと見つめ合いました。その近さに私も手を出して触りたくなるのを、ぐっとこらえます。やがてこのクマは、おもむろに手を下ろしてゆっくり去っていきました。
せっせと氷に穴を掘ってるクマもいました。ときどき軽くジャンプしては、伸ばした腕が着地した勢いで深く掘ろうとしています。腕を動かすたびに氷のシャキシャキという音が聞こえます。熱心に掘ってるのはいったいなんのためだろうと見てると、やがて掘り終えて、そこに丸くなって満足そうに寝てしまいました。寝床づくりだったようです。少しでも体を低い位置に置いて、風を除けるのでしょうか。
シロクマ遠くの氷上で、ごろごろ転がってひとり遊びしてるクマを見つけました。でんぐり返しをしたり、腕を伸ばしてぺたんと寝てみたり、からだを擦ったり這ったり、いろいろな格好で遊んでいて、見ているこちらも楽しくなります。ドライバーは行く手に回り込んで、このクマを待ち伏せました。でも、遊びながら次第に近付いたクマは、ふと車に気付くと、なんだ、という顔で遊びをやめてすたすたと歩いていってしまい、ちょっと残念でした。
親子のクマもあちこちで見られました。2頭の子を連れてバスのそばで座り込んじゃう母グマもいますし、お母さんに寄り添ってこちらを振り返りながらちょこちょこ歩いていく子グマも愛らしいです。
2頭の若いクマが取っ組み合いをしてる光景も見られました。大きく口を開けた顔を付きあわせて、太い腕を互いの肩や胴に絡めます。そして、まるで相撲をとるように、相手を倒そうとしています。遊んでるのでしょうか、それとも喧嘩をしてるのでしょうか、その案配が見ているこちらにはよくわかりませんが、耳から血を流してるクマもいたので、遊びだとしてもそれなりにハードなのかもしれません。カメラを構えてる観光客たちも興奮して、「Fight! Fight!」と声をかけてました。
シロクマ午後には、コーヒーとケーキのサービスがあります。小ぶりで甘いケーキが美味しいです。
ホッキョクグマをウォッチするときは、車のエンジンを切って、思い思いに窓を開けたり後ろの展望デッキに出たりします。デッキは吹きさらしなので、車内より見やすいけど寒さも身にしみます。手が冷たくかじかんで、フィルム交換にはかなり手間取ります。そのためにシャッターチャンスを逃すこともしばしばでした。でも、カメラ派の人は車が停まってエンジンを切りかけたときには、もう素早くデッキに出て場所取りをしていました。このとき後れをとると、大きな白人たちの壁を前に、小柄な日本人の私たちは首を伸ばしても何も見えないということになってしまいます。
カメラといえば、車窓に望遠レンズの長玉がずらっと並ぶ光景は壮観でした。それも、400ミリ・600ミリ・800ミリの高価なレンズばかりです。仕草がゆっくり大きくて表情豊かなホッキョクグマは、カメラ好きにとっては格好の被写体なのでしょう。
その日によって車に同乗する相客は異なりますが、皆、おおむね3日くらい続けて乗車してるようでした。ほとんどが白人で、カナダ・アメリカ以外にヨーロッパからの観光客が多いそうです。
シロクマ運転手兼ガイドのスタッフも、日によって変わります。人によって、運転や案内の仕方が多少異なります。どの車のどのスタッフでもそれなりにホッキョクグマを見られるけど、やはり、より優れたスタッフに当たった日はより心地よいウォッチングとなりました。でも、車を選べないのと同様、スタッフも私たちには選ぶことはできません。
こうしてホッキョクグマの見られる区域でゆっくり7時間ほど過ごすと、16時30分、バギーは戻ってスクールバスに乗り換えます。まれにこのあたりまでクマがやってくることがあるらしく、スタッフが見守る中、素早く移動して乗り込みます。薄暗くなった道路を走って、街に帰り着いたのが17時30分頃でした。
夕食をとれるレストランは、どこも白人の団体でいっぱいです。その横に席を取って、名物のホッキョクイワナやバイソンのステーキをいただきます。どちらも美味しかったです。
小さな街なのでお店も少ないし、閉まるのも早いです。通りを歩く人もあまりいません。
子犬が家の前に繋がれて、寒そうにからだを丸めてました。その向こうの道路を、白いホッキョクギツネが横切っていきます。尾が太くふさふさしてました。
ホッキョクギツネチャーチルに何度も通ってるという日本人に聞いた話では、ヨーロッパでホッキョクグマの人気は高いそうで、ここのツアーは1年前から団体の予約でいっぱいだそうです。日本からだと、数ヶ月前にそのキャンセル狙いで予約を確保しかなく、そのため、必ずしも自分の希望通りの日程にはならないとのことでした。確かに、今回の私たちも、たまたま、「○月○日から○日のあいだで○日間の日程なら、いつでも可」という予約の入れ方をしてました。
または、日本の旅行代理店がツアーを組むこともあります。添乗員もついてて楽ちんそうですので、日程が合えばそれもいいでしょう。ただ、個人手配の場合よりずっと高くなります。

チャーチルは、世界中でもっとも野生の生きものに近付けるところといいます。ツアーでのホッキョクグマ遭遇率はほぼ100%でしょうし、こんな間近でじっくり観察できるのは貴重です。また、ホッキョクグマそのものの動きや表情も魅力的です。
この次は、夏にやはりチャーチルで行われているベルーガのウォッチングツアーに参加したいものです。

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